「うちの子はやる気がなくてダメなんです。」とか、「やる気がないと何をやっても…」という風に言われるお母さん方とよくお会いします。では、その「やる気」とは、どこから生れるのでしょう。
20世紀の偉大な心理学者ジグムント・フロイトによると、人間のあらゆる行動は、二つの動機から発するということです。すなわち、性の衝動と、偉くなりたいという願望がそれです。アメリカの第一流の哲学者であり教育家でもあるジョン・デューイ教授も、同様のことを、少し言葉をかえていい表しています。つまり、人間の持つ最も根強い衝動は「重要人物たらんとする欲求」だというのです。
もし、われわれの祖先が、この燃えるような自己の重要性に対する欲求を持っていなかったとすれば、人類の文明も生れていなかったことでしょう。
無教育で貧乏な一食料品店員を発奮させ、前に彼が50セントで買い求めた数冊の法律書を、荷物のそこから取り出して勉強させたのは、自己の重要感に対する欲求でした。この店員の名は、御存じのリンカーンです。英国の小説家ディケンズに偉大な小説を書かせたのも、十八世紀の英国の名建築家サー・クリストファー・レンに不朽の傑作を残させたのも、また、ロックフェラーに生涯かかっても使い切れない巨万の富をなさしめたのも、すべて自己の重要感に対する欲求だったのです。
金持ちが必要以上の邸宅を建てるのも、やはり、同じ欲求のためです。最新流行のスタイルを身につけたり、自家用の新車を乗り回したり、わが子の自慢話しをしたりするのも、みな、この欲求あるがために他ならないのです。
人間は、誰でも周囲のものに認めてもらいたいと願っています。自分の真価を認めてほしいのです。小さいながらでも、自分の世界では、自分が重要な存在だと感じていたいのです。ですから、子供の中の、この欲求を正しく満たしてやること、あるいは満たせるのだと思わせることが、勉強という行動を起こさせるカギなのです。
「勉強は好きか?」と聞くと、ほとんどの子供達が、異口同音に「きらい!」と即座に答えます。誰しも、勉強のための勉強はしたくないのです。そこに自己の重要性という要素の目標がプラスされることによって、嫌いな勉強にも真正面から取り組ませるエネルギー、つまり「やる気」が生れるのです。
優秀な子供や努力家といわれる子供達というのは、必ずといってよいほど目標を持っています。将来の夢や志望校を、実に明確に答えます。やはり目的意識がやる気を生むのです。では、どういった目標の持たせ方をすればいいのでしょうか。
目標には、3段階の目標が必要です。短期的目標、中期的目標、長期的目標、この3つです。
まずは、少し努力すれば達成可能な短期的目標を持たせます。現在、あるいは過去の自分と競争させるのもよいでしょう。もちろん達成したときには大いにほめ、自己の重要感をくすぐってやって下さい。これを何度かくり返していくうちに、やがて自分から目標を設定しはじめます。これが一つの転機です。目標を達成する喜びが分かったのです。自分の能力に対する自信を取り戻したのです。
この期を逃さず、今度は、長期的目標について話し合ってみましょう。その子の特性に合わせ、本当に本人が夢を描けるようなものでなくてはなりません。大人から見れば、少し幼稚と思われるようなものでもよいのです。あくまでも、内発的なものでなければなりません。親は、それを引き出す援助をするだけでよいのです。
そして、中期的目標、今度は親の出番です。先ほど決めた夢を実現するためには、どういった進路があるかを語ってやりましょう。大学に進むべきかどうか、大学に行くならどういった大学を選ぶべきか。また、そのためにはどういった高校に進むべきかを、旅行の日程を決めるように、分かりやすく語ってやって下さい。まさに、人生旅行です。そして、再度そのための短期的目標を設定させていくのです。
成功者といわれる人たちの共通点として、まず、最初に目標を設定しているということがいえます。目標こそが、自分の人生の意義と真価を教えてくれる道しるべなのです。「Boys,be
ambitious !(少年よ大志をいだけ)」これは、北海道大学の前身である札幌農学校の教授だったクラーク博士の言葉です。ぜひ、子供達にこの言葉を贈ってやって下さい。